それは、仕事で疲れ果てて帰宅した、冬の寒い夜のことでした。いつものように玄関の鍵穴に鍵を差し込み、ガチャリと解錠。さあ家に入ろうと、鍵を抜こうとした、その瞬間でした。鍵が、びくともしないのです。まるで、鍵穴と鍵が溶接されてしまったかのように、完全に固着していました。最初は「あれ?」くらいの軽い気持ちでした。少し角度を変えれば抜けるだろうと、左右に軽くこじってみます。しかし、全く動く気配はありません。だんだんと焦りが募り、少しずつ力を込めて引き抜こうとしますが、それでも鍵は頑固に抵抗を続けます。時間はすでに夜の11時を過ぎ、冷たい風が容赦なく吹き付けます。ドアは開いているのに、鍵が抜けないせいで、ドアを閉めて施錠することができない。つまり、家には入れるけれど、無防備な状態で夜を明かさなければならないのです。その事実に気づいた時、背筋に冷たいものが走りました。このままでは安心して眠れない。私は震える手でスマートフォンを取り出し、「鍵 抜けない 深夜」と検索。表示されたいくつかの鍵屋の中から、24時間対応と書かれた業者に藁にもすがる思いで電話をしました。電話口の担当者は、私のパニック状態の声を冷静に受け止め、「大丈夫ですよ、すぐに専門の者を向かわせます」と言ってくれました。その言葉に、どれほど救われたことでしょう。待つこと40分ほど。到着した作業員の方は、私の状況を一目見るなり、「ああ、これは錠前の経年劣化ですね」と一言。専用の潤滑剤と特殊な工具を使い、驚くほどあっさりと、しかし慎重に、固着していた鍵を抜いてくれました。そして、錠前の内部を見せてくれながら、部品が摩耗していることを丁寧に説明してくれました。結局その日は、応急処置をしてもらい、後日、防犯性も考えて錠前一式を新しいものに交換することに。費用は安くありませんでしたが、あの恐怖の一夜を思えば、安全と安心のための必要経費だったと心から思えます。この一件以来、私は鍵の些細な不調も見逃さないよう、日頃のメンテナンスを欠かさなくなりました。
私が体験した、鍵が抜けなくなった恐怖の一夜