自動車の世界ではすっかりお馴染みとなったイモビライザーシステムですが、近年ではバイクにも標準装備されるモデルが増えてきました。特に、盗難のリスクが高いとされる大型バイクや人気車種を中心に、その搭載はもはや常識となりつつあります。バイクのイモビライザーも、基本的な仕組みは自動車と同じです。キーに内蔵されたICチップのIDと、車両側のIDを電子照合し、一致しなければエンジンは始動しません。これにより、配線直結などの古典的な盗難手口を完全に無力化することができます。しかし、バイクのイモビライザーには、自動車とは異なる特有の注意点が存在します。最も大きな違いは、「キーを紛失した際のリスクの高さ」です。自動車の場合、鍵を全て紛失しても、最悪ディーラーに持ち込めばECU(コンピューター)交換などで対応が可能です。しかし、バイク、特に一部の海外メーカーの車種では、キーの情報をECUだけでなく、メーターパネル自体が記憶している場合があります。このタイプのバイクで全てのキーを紛失してしまうと、ECUとメーターパネルをセットで交換しなければならなくなるケースがあるのです。そうなると、修理費用は数十万円という、もはや車両を買い替えた方が良いレベルにまで跳ね上がってしまいます。また、バイクは自動車に比べて、鍵穴が雨風にさらされやすいという環境的な不利もあります。キーシリンダーの劣化が進むと、イモビライザーのアンテナ部分の接触不良などを引き起こし、正規のキーであるにもかかわらず、IDをうまく読み取れずにエンジンがかからなくなる、というトラブルも起こり得ます。こうしたリスクを避けるため、バイクのイモビライザーキーの管理は、自動車以上に慎重に行う必要があります。スペアキーの作成と、自宅など安全な場所での厳重な保管は、もはや義務と言っても過言ではありません。そして、洗車時などには、キーシリンダー周りに直接高圧の水をかけないようにするなどの配慮も、システムの寿命を延ばす上で重要です。愛車を守る強力な盾であると同時に、失った時の代償も大きい。それがバイクのイモビライザーなのです。