日本の住宅で、玄関や勝手口に、広く採用されている「引き戸(スライドドア)」。その省スペース性や、開放感は魅力的ですが、スマートロックの導入を考えた時、この引き戸が、一つの大きな壁として、立ちはだかることがあります。なぜなら、市場に出回っている後付けスマートロックの、そのほとんどが、ドアを前後に開閉する「開き戸」の、回転式サムターンに取り付けることを、前提に設計されているからです。引き戸の鍵は、多くの場合、戸の先端にある「戸先錠」や、二枚の戸が重なる中央部分にある「引違戸錠」で、施錠の際には、サムターンを、スライドさせたり、押し込んだりする、特殊な操作が必要です。この、開き戸とは全く異なる動きを、汎用のスマートロックで制御することは、できません。では、引き戸の家は、スマートロックの利便性を、諦めるしかないのでしょうか。答えは「ノー」です。近年、この日本の住宅事情の、大きなニーズに応える形で、「引き戸専用」のスマートロックや、取り付けを可能にするための、様々なソリューションが、登場しているのです。その一つの形が、錠前一式を、スマートロック機能が内蔵された、専用のものに丸ごと交換する、という方法です。この場合は、専門業者による工事が必要になりますが、最も確実で、見た目もスッキリと収まります。物理的な鍵と、スマートフォンアプリの両方で、施錠・解錠できる、ハイブリッドな運用が可能になります。また、既存の錠前はそのままに、ドアの別の場所に、スマートロックと連動する「電子サムターン」や、デッドボルトを受け止める「電子ストライク(受け座)」を、後付けするという、少し高度な方法もあります。これにより、アプリで操作すると、後付けしたロックが作動し、ドアを施錠・解錠できるようになります。さらに、一部の後付けスマートロックメーカーからは、引き戸の特殊なサムターンに対応するための、専用の「別売りアダプター」も、販売されています。自宅が引き戸だからと、諦める前に、一度、最新の製品情報を、チェックしてみてはいかがでしょうか。あなたの家の玄関も、スマートな未来の扉へと、生まれ変わるかもしれません。