スマートフォンで玄関の施錠・解錠ができる「スマートロック」。その未来的な利便性に憧れ、自宅への導入を検討している方も多いでしょう。しかし、その手軽さの裏で、意外と見落としがちなのが、「全ての玄関ドアに、スマートロックが取り付けられるわけではない」という、厳然たる事実です。特に、後付け型のスマートロックは、既存の錠前の形状や、ドアの構造に、大きく依存します。購入してから「うちの鍵には使えなかった」という悲劇を避けるために、スマートロックが取り付けられない、代表的な鍵のタイプを、事前に知っておくことが重要です。まず、最も多くの後付けスマートロックが対応していないのが、「装飾錠(サムラッチ錠)」や「プッシュプル錠」といった、特殊な形状の錠前です。これらは、ドアノブとサムターン(内側のつまみ)が一体化した、縦長の複雑なデザインをしており、サムターン部分だけを覆うように設置する、汎用のスマートロックを取り付ける物理的なスペースがありません。次に、サムターンの「形状」や「位置」も、重要な制約となります。例えば、サムターンが、ドアノブと一体化している「インテグラル錠」や、サムターンの周りに、指でつまむための十分なスペースがない、特殊なデザインのもの。あるいは、サムターンが、ドアの極端に高い位置や低い位置にあり、スマートロック本体を取り付ける平面が確保できない、といったケースです。また、ドアの内側に、大きな段差があったり、凹凸が激しかったりすると、スマートロックを両面テープで、安定して固定することができません。さらに、二枚の扉が重なり合う「引き戸」も、多くの後付けスマートロックが、そのままでは対応できない、代表的な例です。引き戸専用のモデルや、特別なアダプターが必要となる場合があります。スマートロックの導入を考えるなら、まず、メーカーのウェブサイトで公開されている、対応錠前のリストや、取り付け診断のページを、徹底的に確認すること。それが、失敗しないための、最も確実で、重要な第一歩となるのです。