ディンプルキーの構造とその防犯力
ディンプルキーの防犯性の高さは、その独特な構造に由来します。従来の鍵とは異なり、鍵の表面にはギザギザの山ではなく、複数の小さなくぼみ、すなわち「ディンプル」が配置されています。これらのディンプルは、深さや位置、大きさがそれぞれ異なり、非常に複雑なパターンを形成しています。鍵を鍵穴に差し込むと、これらのディンプルがシリンダー内部にある多数のピン(タンブラーピン)を押し上げます。全てのピンが正しい高さに揃った時に初めて、シリンダーが回転し、鍵が開く仕組みです。このピンの数や配置の複雑さが、ディンプルキーの防犯性を高める大きな要因となっています。ピンの数が多ければ多いほど、またその配置が複雑であればあるほど、ピッキングによる不正解錠は困難になります。ピッキング犯は特殊な工具を使ってピンを一本ずつ操作しようとしますが、ディンプルキーの複雑なピン構造は、その作業を極めて難しくさせます。さらに、多くのディンプルキーには、アンチピッキングピンと呼ばれる特殊な形状のピンが組み込まれており、不正な操作を感知するとピンがロックされたり、通常とは異なる動きをしたりして、解錠をより一層困難にします。また、鍵違い数(理論的に作成可能な鍵のパターンの数)が非常に多いことも、ディンプルキーの大きな特徴です。数百万通りから数億通り以上という膨大な鍵違い数は、偶然同じ鍵が存在する可能性を限りなく低くし、また、鍵穴から鍵の形状を読み取って合鍵を不正に作成することも極めて難しくしています。このように、ディンプルキーは精密かつ複雑な内部構造によって、高い防犯性能を実現しているのです。